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阪神の藤川監督は選手と積極的にコミュニケーションを取った(写真・黒田史夫)
阪神の藤川監督は選手と積極的にコミュニケーションを取った(写真・黒田史夫)

異例?!なぜ阪神の藤川監督は沖縄キャンプ初日に選手達に「おめでとう」と声かけをしたのか…岡田前監督が作り上げたチームに求めている変化とは?

 全体練習が始まると、ブルペン、グラウンドと動き回り、最後はまたサブグラウンドに移動して佐藤、大山、木浪らの特守を近くで見守った。途中、田中内野守備コーチが、厳しい打球で、左右にふりかけると、何やら声をかけて手で押さえるようなジェスチャーをした。「無理をする必要はない」とでも言ったのだろうか。初日に張り切りすぎて怪我につながることに細心の注意を払ったのかもしれない。
 2軍キャンプの具志川にも、この日、2度連絡を入れ、故障者が出ていないか、コンディションはどうかを確認したという。
 キャンプのテーマは「没頭」「姿勢」「凡事徹底」の3本柱とした。
「没頭している姿勢は、ファンの方々に言葉がなくとも力強く時には怖く激しく映る。スタンドから気迫あふれるプレーを感じてもらう。息をのむ瞬間がキャンプ中にもあれば。凡事徹底は、こちら側。監督、首脳陣、スタッフが選手の動向を見守り、コンディションをよく見守る」
 監督、コーチに科した「凡事徹底」には、故障を未然に防ぐための観察力も含まれているのだろう。
 シートノックでは、岡田前監督が徹底していた外野は、必ず速くて強いボールを正確にカットマンまで返すという原則を撤廃して打球のケースによっては、中継を挟まず、ダイレクトに二塁、三塁へ送球させていた。長いペナントレースを考えると中継プレーを徹底した方がトータルではミスは減る。実際、この日は、三塁へのダイレクト送球ではミスが目立った。せっかく岡田前監督が築いた文化を台無しにする方針には、疑問符がつくが、藤川監督は、「18、19歳の若い選手は頭から突っ込み気持ちを抑えられない。自分にもその時期はあった。育成段階で通ってきた道」と、誰がどんなミスをしたかを注意深く見ていた。
 グランドでの神出鬼没の動きは、岡田前監督と似ている。
「集中力が高まった瞬間を見たい。追い込んで、回りが気にならない時がゲームで一番素晴らしい状態。その表情や雰囲気を感じておきたい。集中力が落ちているところをシーズン中に勘づくかも」
 藤川監督が見たかったのはそこだという。これも独特の感性なのかもしれない。
 岡田前監督時代にあったピーンと張りつめた緊張感はなかった。最初のベースランニングの一塁への走り抜けの際に悪送球まで想定した構えを見せた選手も少なかった。だが、一方で藤川監督が作り出す新しいチームの空気感、そしてイズムの一端は、かいま見えた。
「仕上がりはいい」と満足気だった背番号「22」は、宜野座のスタンドを埋めた約3500人のファンに向かってこう約束した。
「この1か月、最高の準備をします。3月に入り開幕する頃には、“よし!タイガースいけるぞ”と、勢いをもってファンのみなさなに胸を張れるチームを作ります」
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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