「毎日足を折られ失神する夢を見た。生きて帰れて良かった」武尊が引退マッチの壮絶舞台裏明かす…ロッタンから4度ダウンを奪い5回TKO…リングで異例の肉声メッセージを届けた理由とは?
格闘技イベント「ONE SAMURAI 1」が29日・有明アリーナで1万人のファンを集めて行われ、この試合を限りに引退する武尊(34、team VASILEUS)がONEフライ級キックボクシング暫定王座決定戦でロッタン・ジットムアンノン(28、タイ)から計4度のダウンを奪い5ラウンド2分22秒TKOで勝利し有終の美を飾った。昨年3月に”秒殺”で敗れたロッタンにリベンジを果たした武尊は「失神負け」の悪夢にうなされていた壮絶な裏舞台と「生きて帰ってきて良かった」と本音を明かした。そして異例の肉声で「自分はいなくなるが次に格闘界を引っ張る選手が出てくるまで応援をお願いします」とファンにメッセージを伝えた。

武尊は最後まで笑っていた。
「打って来い!」
第5ラウンドにロッタンの反撃を食らうも、そう笑顔で挑発し、ノーガードであえてパンチを受けてみせた。
「楽しかった。殴り合いたいな。そういう感じだった。この5ラウンドで、小学校から始めて30年やってきた格闘技が終わってしまう。勝ちたいより、ロッタンのパンチもっともらっておきたいと」
もう武尊は無双状態だった。
ワンツーでゆらゆらとコーナーへ下がらせると、そこへ打ち下ろしの右をダブルでお見舞いすると、ロッタンはマットへ崩れた。タイの元王者は、それでも立ち上がってきたがロープを背負わせ左右フックを浴びせると、腰が落ち、レフェリーが間に入ってTKOを宣告した。
武尊は歓喜の雄叫びをあげ、リングに座り込み、そこに頭をこすりつけながら号泣した。そしてコーナーに駆け上がり、興奮の坩堝と化した1万人のファンを煽り、激戦の影響で足元はおぼつかなかったが、見事にトンボを切ってみせた。
チャトリCEOから黄金色の暫定ベルトを授与されると、抱きしめてまた涙。ファンへ感謝の思いを伝え「いっぱい言いたいことがあったが、ほんと嬉しいしかない」と言葉につまり、敗者のロッタンへの拍手を求めた。
昨年3月の前戦ではわずか80秒で戦慄の左フックでTKO負けを喫した。試合後、武尊は壮絶な葛藤があったことを明かす。
「試合前には弱音を吐きたくないので言わなかったが、倒される夢、失神している夢、足を折られている夢が、毎日出てきて怖かった。みんなの期待をまた裏切っちゃうのかと」
そしてしみじみと「生きて帰って良かった」と口にした。
その恐怖に打ち勝つ万全の準備はしてきた。
「戦い方を凄く研究した。ロッタン選手はぶんぶん振り回しているようで達人みたいな動きをする」
無鉄砲に殴り合えば、前戦のように隙が生まれ、そこにパンチを浴びるリスクがある。
「試合前にイメージを作るとどうしても我慢できなくて殴り合ってしまう」との葛藤があったが、気持ちをセルフコントロールした。
「自分が強かった時の戦いを思い出した。殴り合いたいが、興奮を抑え、丁寧に削ってから殴るを意識した。応援してもらっているみんなに勝ちを届けたかった。ベルトを届けたかった。だから自分と戦った」
1ラウンドはカーフの蹴り合いで距離を取り、ガードを強く意識して高く固めた。珍しく慎重にディフェンスを強固にしていた。だが、本来の本能のスイッチが入るのに時間はかからなかった。
2ラウンドに強烈な左フックのカウンターをぶちこみ一度目のダウン。ロッタンは「スリップダウン」をアピールしたが、完全にヒットしていた。さらに左ストレートで2度目のダウン。満場の「タケルコール」をバックに武尊がロッタンをパニックに陥れた。

