「井上尚弥が中谷潤人に負ける要素が見当たらない」…5.2東京Dはハイブリット型モンスターで迎え撃つ…大橋会長は「1回から動く。中谷選手がどう出るかは9割方わかっている」不敵予告
公開されたLeminoのドキュメント番組の中ではキャリア33戦目にして初めて対峙する長身サウスポーを「相性は最悪」と表現していた。だが、沖縄合宿、メキシコ、米国から呼んだ5人の仮想中谷と80ラウンドのスパーを積み、そのイメージは変化した。
「対策をしどんな入り方、戦い方でも対応できる準備ができている。ドキュメンタリーではああいう言い方をしたが、今はイメージも固まっている。映像もかなり見たし会場でも見た。中谷潤人のスタイルは自分の中に入り込んでいる。海外のわからない選手じゃない。落とし込みやすかった」
筆者はモンスターに死角があるとすれば、強引に倒しにいった時のガードの甘さと、その際に理詰めの井上がミスを犯すポジション、距離だと考えている。
2024年5月のルイス・ネリ(メキシコ)戦、昨年5月のラモン・カルデナス(米国)戦でのダウンはいずれもそうだった。ネリはサウスポーでカルデナスはオーソドックスだが、その油断から左フックを浴びた。
おそらく中谷陣営が狙うのもその打ち終わりの隙だ。
井上がミット打ちで見せたガードの素早い戻しと正確性、高さは研ぎ澄まされたものだったが試合で強引にいくと崩れる危険性もある。一方で昨年9月のWBA世界同級暫定王者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)をパーフェクトに封じ込んだようなポイントにこだわったボクシングをすれば、中谷に付け入る隙はなくなる。
「倒し屋」か「完全なポイントアウト」か。どちらのスタイルを見せるのか。
「どちらも見せたい」
それが答えだった。
中谷は専門誌「ボクシング・ビート」のインタビューに「ぶっ倒す」と宣言し、前日のロス合宿からの帰国会見でも「倒すというファイターの心を持っているんで。しっかりアクションを起こしていきたい」と、その宣言を補足した。
だが、井上は「返り討で倒す」とはアンサーせず「どちらも選択していきたい」と、努めて冷静だった。
つまり「倒し屋」と「完全ポイントアウト」の両方を状況において使い分けするハイブリッド型のモンスターで最強挑戦者を迎え撃つのだ。
ネリ戦では、東京ドームという巨大な舞台装置にも、せきたてられた。テンションが異常に上がり、ネリを1ラウンドから倒しにいき、左フックを浴びた。1990年には、無敗のヘビー級王者であるマイク・タイソン(米国)が伏兵のジェームズ“バスター”ダグラス(米国)にKO負けするという世紀の番狂わせも起きている。ドームには魔物が棲む。しかし、井上は「(ドーム対策など)まったくない」と言い、こう付け加えた。
「あれはドームだからは関係なく、ネリに一撃を当てられた。それだけの事実。ドームに限らず、会場がどこであれ起きていたシーン。ただ一度ドームを経験している。今回は生かせると思う」
戦略も固まっている。
参謀の父である真吾トレーナーが「中谷がどう動くか、どう出てくるかで変わる。尚の出入り、スピードだったり空間を見て欲しい」とまで言うと、横から井上がジョークを交えて「だめだよ、そこまで言ったら」とブレーキをかけた。
真吾トレーナーは「ちょっといい過ぎた(笑)。のっそりいくかも。亀さん殺法で」と言い直したが、それは逆説なのだろう。

