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互いにディフェンススキルを認め合い笑顔(写真・山口裕朗)
互いにディフェンススキルを認め合い笑顔(写真・山口裕朗)

井上尚弥の3-0判定Vは苦戦か完勝か?左目眼窩底骨折の疑いの中谷陣営が明かす「各所でつけいる隙があった」とモンスターの計算づくの劣勢ラウンド…裏舞台にあった戦いの真実

 “ミニ”オーケストラによる「ディパーチャー」、そして世界的ギタリスト布袋寅泰の生演奏による「バトル・オブ・モンスター」に切り替わるW入場曲で登場した井上は、東京ドームを埋めた5万5000人のファンを緊張感という世界に酔わせた・
 1ラウンドから緊迫した。中谷は中間距離でのカウンター戦法。無駄に手を出さず必殺の左を打ち込むチャンスをただひたすらに不気味に待ち、井上の打ち終わりに合わせてくる。ゴング間際に中谷の狙いすました左フックが空を切ると、会場がどよめきに包まれた。
 井上も慎重だった。被弾リスクの少ない右のボディフックで、そのカウンターのタイミングを探りに出る。そして3ラウンドに中谷の目線を下に意識させておき、ワンツーを放つも、中谷がサイドに素早くポジションチェンジをしてくるので、完璧にはとらえきれあい。それでも4ラウンドには上下に打ち分けたジャブがヒットし、右ストレートがヒットした。ここまでのジャッジの採点は全員が井上を支持していた。
「中谷選手がそう出てくるなら今日の戦い方になる。想定内の入り方でした」
 井上がそう振り返れば、真吾トレーナーも「中谷選手はパンチが当てられなかった。こちらが空間を支配していた」と序盤戦を制したことを評価した。
 だが、中谷もこの展開はプラン通りだった。
「井上選手は学ぶ力が強い。学ばせないためにああいった戦いになった」
 井上に持っているパンチを序盤に見せてしまうと、そのすべてを察知され、対応されて中盤以降に通用しなくなる。中谷g自分からほぼ仕掛けないカウンター戦法にはパンチを“隠す”狙いがあったのだ。
 だが、ポイントを落とし続け、ゴーサインの出た8ラウンドからの反撃では遅すぎた。
 それでも積極的にアクションを起こし、ワンツー、左ディから右フック、右の上下へのダブルなどコンビネーションブローを軸に形勢逆転を狙った。井上にロープを背負わせるシーンも作った。
 ジャッジの2人は8、9、10ラウンドを中谷につけ、1人も8、10ラウンドを中谷の10―9とした。
 しかしそれもすべて12ラウンドをトータルで考え勝利に何が一番近いかを考え尽くした井上の手の内にあった。
「前半からポイントを陣営と確認しながら戦っていた。戦う前から言っていた、今日は本当に勝つと。だから8、9、10は捨ててもいい。自分がポイントを取るというか、少しポイントを譲ってもいいかなと思って戦っていた」
 あえてポイントを譲ったのだ。
 それが10ラウンドの右フックのヒット、そして勝利を決定的にする11ラウンドの右アッパーへとつながる布石だった。
 2人のジャッジがつけた4ポイント差は、小さいようで実はとてつもなく大きな差だった。

 

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