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互いにディフェンススキルを認め合い笑顔(写真・山口裕朗)
互いにディフェンススキルを認め合い笑顔(写真・山口裕朗)

井上尚弥の3-0判定Vは苦戦か完勝か?左目眼窩底骨折の疑いの中谷陣営が明かす「各所でつけいる隙があった」とモンスターの計算づくの劣勢ラウンド…裏舞台にあった戦いの真実

 映画「マトリックス」のようにまるで時間が止まっているかのように間一髪で互いにパンチを外し合った。8ラウンドには中谷が井上の右を交わし、井上が中谷のアッパーと打ち下ろしの2発を綺麗に外して、互いにニンマリと笑い、その高レベルの技術の攻防に会場から拍手が送られるシーンがあった。
「脳のスタミナが削られた。お互い打っては外して、打っては外しての技術戦を楽しんでいるなと。試合をしながら、そんな感覚で楽しい試合でした」
 好敵手との緊迫の12ラウンドを井上はむしろ楽しんでいたのである。
 中谷との対戦を前に「チーム井上」は総力を結集して「勝ちに徹する」ためにやれることはすべてやった。4団体統一王者の驕りや油断などまったくなかった。それが井上陣営の結束力であり、井上の強さの理由だった。前日のルールミーティングでは、中谷のバンテージの巻き方にルール違反の疑いがあると、異議を申し立て、ルディ・ヘルナンデストレーナーを激怒させた。

 この日の試合前のバンテージチェックでは、拳のナックルパート部分を保護するための積層材(緩衝材)がルールに沿って作成されていることを確認した。
 さらにこの日の試合直前には、JBCが立ち会いの元で行われるレフェリーインストラクションで「ラビットパンチ」や「ブレイク後の打撃」などの反則行為をしっかりとチェックしてもらうことを再度要求した。“ダーティファイト”を警戒したのだ。
 試合は、正々堂々とクリーンなファイトになった。逆に偶然のバッティングで出血したのは中谷の方だった。
 井上は大健闘した勇敢な敗者にエールを送った。
「気持ちが強く、その中に高度な技術も含まれていた。必ずスーパーバンタム級でチャンピオンになる選手。今日戦ってそう感じた」
 年末のサウジの戦いで評価を下げ、ほとんどの予想が井上勝利とされる中で、中谷は敗れてなお、ボクサーとしての価値を高めた。
 次なる戦いについて井上は「白紙」と言い、多くを語らなかった。
 昨年はパウンド・フォー・パウンドランキング2位の王者としては異例の年間4試合を戦い、この東京ドーム決戦まで心身ともに緊張感が続いていた。「少し休ませて欲しい」は当然だろう。
 ただリング上ではファンに「また皆さんが燃えるようなファイトをしていきたい」とも語り「また東京ドームに戻ってきたい」とも約束していた。RONSPOの別記事で詳しく紹介したが、この日、来場したサウジアラビアの総合娯楽庁のトゥルキ・アルシェイク長官が来年2月に名古屋のIGアリーナで「リヤドシーズン」日本大会を計画している。メインは、井上とWBC、WBA、WBO世界スーパーフライ級王者、ジェシー“バム”ロドリゲス(米国)とのビッグマッチで、ファイトマネーは50億円が用意されているという。
 そしてその試合でスーパーバンタム級を卒業、次に日本人初となる5階級制覇への挑戦となるフェザー級の戦いが待っている。
 もう午後11時を回っていた試合後会見で筆者は井上にひとつ質問した。
「今日は伝説の1日になったのか?」
 東京ドーム決戦は「THEDAY―やがて伝説と呼ばれる日」と命名されていた。
 井上はふっと表情を緩めてこう返した。
「伝説の日になったかはわかりませんが、“やがて”なんでね。僕のボクシング人生はここがゴールではない。まだまだ伝説を作っていけるのではないかと思っている」
 日本人最強挑戦者を蹴散らした2026年5月2日はモンスターにとって伝説の始まりに過ぎないのかもしれない。

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