記者会見で鳴らされた心理戦ゴング…40年前に1回KO浜田剛史氏の「世界戦に重ねたい」比嘉陣営は本当に最初から猛攻を仕掛けるのか…対する増田は「カウンターに気をつけて」と警告
プロボクシングのトリプル世界戦(20日・両国)の直前会見が18日、東京ドームホテルで行われ、メインのWBA世界バンタム級王座決定戦に出場する同級1位の増田陸(28、帝拳)と元WBC世界フライ級王者で同級2位の比嘉大吾(30、志成)が前哨戦となる心理戦を繰り広げた。今日19日の前日計量を経てゴングは20日だ。
「リスクを負う戦いをしたい」
緊迫した空気ではない。笑いもあった。冗談も飛び交った。だが、東京ドームホテルの広い宴会場でのオフィシャルな記者会見で繰り広げられた心理戦は、このファイトの行方を占うものだった。
先に仕掛けたのは比嘉が師と仰ぐ野木丈司トレーナーだった。
「隣にいらっしゃいますけれども、沖縄の大先輩である浜田剛史さんが世界タイトルを獲得した試合を、そのまま重ねたいと思います」
それは帝拳の浜田代表が、ちょうど40年前、場所も同じく両国国技館で、レネ・アルレドンド(メキシコ)に1ラウンドから猛攻を仕掛けてKO勝利した試合だ。つまり1ラウンドから勝負に行くと宣言したのである。
比嘉と同じく浜田代表も沖縄出身。しかもフックを振り回すファイトスタイルもどこか似ている。
浜田代表は苦笑いを浮かべていた。
増田も負けていなかった。
「その試合というのは、自分も映像で何度か見たことがあります。1ラウンドから強打を振って相手を倒しに行くボクシングだったと思います。非常に楽しみですし、そう仕掛けてこられた時の練習もしっかりとやってきたので、カウンターに気をつけて来て欲しいと思っています」
1ラウンドから突っ込んできたらそこにカウンターの右フック、あるいは、彼の最終兵器である左のストレートを御見舞いすると警告した。
比嘉にも反応を聞く。
「やはり1ラウンドから行くのは危険だなという感じがしてきましたので、当日どうするかは考えながら、気合を入れていきたいですね」
らしい表現でごまかした。
比嘉は、4度目の正直となる日本どころか世界でもあまり例を見ない4戦連続世界挑戦となるリングでは「リスクを負う戦いをしたい」という。
「ここ3戦は勝てばいいと思っていたんですけど、どんな形でも結局は倒して勝ちに行くという姿勢を見せたいなと思っています。そこのリスクですね」
WBO世界同級王者の武居由樹(大橋)、WBA世界同級王者、堤聖也(角海老宝石)、同アントニオ・バルガス(米国)と3戦連続でダウンを奪うも、武居には、僅差の判定負け、堤、バルガスは、逆にダウンを奪われるシーンもあり、2戦連続でドローに終わった。挑戦者にとってドローは負けに等しい。
「何が足りなかったのか?」
いろんな人に意見を聞き、5階級制覇に挑戦したジムのカリスマ的存在である井岡一翔のボクシング哲学にも感化された。その中で自ら出した結論が「リスクを負う戦い」、つまり倒すか倒されるかの超攻撃的スタイルだ。
それは、野木トレーナーの1ラウンド勝負宣言にも符号するが、筆者はこれはあくまでも心理戦だと見ている。
会見が終わり「1ラウンドからいかないでしょう?」と野木トレーナーに聞くとニヤっと笑い「ふふふ。その覚悟ってことです」との返答。
増田陣営の大和心トレーナーにも「どう思う?」とふると「くると思っていますよ。1ラウンドから来ても大丈夫なように想定して準備はしてあります」と、野木トレーナーの発言をただの挑発とは受けとっていなかった。
増田の左ストレートか、比嘉の左フックか、先にパンチを当てた方がクローズできる試合になるのは間違いない。比嘉はゴチャゴチャのインファイト、増田は中間からロングレンジ、左ストレートを狙える距離でボクシングをしたい。その駆け引きが勝敗を分けることになるが、得てして、ハードパンチャー同士の勝負は、互いに警戒しあい、判定にもつれこむケースも少なくない。

