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5.2東京ドームのスーパーマッチが発表された(写真・山口裕朗)
5.2東京ドームのスーパーマッチが発表された(写真・山口裕朗)

「中谷なら井上を倒せるって『ちょっと待てよ』」で始まった運命の糸…5.2東京ドーム記者会見を読み解く「僕には判定では勝てません」「5月2日にわかります」…中谷“参謀”発言修正の謎も

 プロボクシングのスーパーバンタム級の4団体統一王者の井上尚弥(32、大橋)が5月2日、東京ドームで3団体で同級1位の中谷潤人(28、M.T)と防衛戦を行うことが6日、東京赤坂のザキャピトル東急で発表された。またセミセミで井上の実弟のWBC世界バンタム級王者の拓真(30、大橋)が5階級制覇を狙う同級4位の井岡一翔(36、志成)と初防衛戦を行う。なお試合の模様はLeminoで有料配信され、事前販売が6050円、当日が7150円と、歴史的な一戦だけあって強気の料金設定となっている。

 「運命的と言っていいんじゃないですか」

 2人の運命の糸はどこから紡がれたのだろう。
「この同じ時代にお互いに全盛期と言える時代に積み上げてきた戦績。運命的といっていいじゃないんですか」
 モンスターが歴史的1戦の重みを噛みしめる。
 首相官邸前のホテルの記者会場には、カメラが16台、報道陣が約200人。空いてる席を探すのに苦労した。ボクシングメディア以外のマスコミが目立つ。大橋秀行会長も「報道陣の数を見れば反響の大きさがわかる」と驚いていた。
 井上はいつ中谷を意識したのだろう。
「最初はまったく気にしていなかった。階級が近づくにつれ、ファンが『中谷なら井上を倒せるじゃないか』と『ちょっと待てよ』と」
 その世論が井上のプライドをくすぐった。
 中谷が2024年2月にWBCバンタム級王者のアレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)を6回に倒し、そこから3試合連続KOで、バンタム級で存在感を示し始めた頃か。
「日本のファン、海外のファンから、そういう声が出ているからね。積み上げてきたキャリアを見た時、なめられてんじゃないか、という気持ちになった」
 一方の中谷は少し考えて「バンタムに上げてから、より回りの声がね。井上選手も言ったので」と記憶をたぐった。
 ゴングが鳴ったのは、1年前の年間表彰式。井上が「1年後、東京ドームで」と呼びかけて2人は負けられない十字架を背負った。
 井上は5月にラスベガスへ上陸。ラモン・カルデナス(米国)にルイス・ネリ(メキシコ)に続くダウンを奪われた。危機説が流れるも、9月に、最大の敵であるWBA世界同級暫定王者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)をパーフェクトなボクシングで完封した。
 豪快なKO劇とは違う、緻密で3分間があっという間に過ぎる緊張感のある駆け引きの新境地。井上自身は新境地でなく今までもできるボクシングだと強弁するが、ボクシングを本来、拳闘ではなく、スポーツととられる井上らしい作品だった。
 そして年末のサウジアラビアで”格下”のアラン・ピカソ(メキシコ)にプロボクサーの風上にも置けぬ、恥ずべきディフェンス一辺倒の最後まで立っているだけで良しという戦いをされて、井上も井上で冷静さを失い、KO決着を逃した。
 中谷は6月に西田凌佑(六島)に1ラウンドから仕掛けるサプライズのスタイルで6回TKO勝利して、WBCとIBFのベルトを統一した。そこまではよかった。だが、サウジでのバンタム転向初戦となるセバスチャン・ヘルナンデス(メキシコ)戦で「負けていた」との関係者の声も出るような内容で評価を落とす。
「中谷なら井上に勝てるのではないか」の声は「中谷でも井上に勝てないのでは」と潮目は変わった
 だが、中谷は「年末の試合で得るものが大きかった。相手のやりたいことにつきあいすぎた。切り替えてよりスマートにボクシングを展開していれば楽に戦えた。成長した姿をお見せすることで世界王者になりたい」と前向きだった。
 スパーリングパートナーとして招聘した経緯があり、ヘルナンデスの実力を知る井上が、「あの試合は凄く評価できる。ひとつ中谷君を強くした」と気を引き締めて、大橋会長も「サウジの苦戦で強敵になった。あれがなければ普通に勝つのかなと思っていたが、課題を克服して一段強くなる」とむしろ警戒心を強めた。
 5.2で起こすべき展開を先に中谷が体験してしまったことを悔いた。

 

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