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判定結果を聞き王座返り咲きを果たした井岡一翔は号泣した(写真・山口裕朗)
判定結果を聞き王座返り咲きを果たした井岡一翔は号泣した(写真・山口裕朗)

なぜ井岡一翔は大ブーイングを浴びた約3キロ体重超過の剥奪WBA王者にドーピング問題試練も乗り越え勝利できたのか…フランコ「彼の方が精神的にタフだった」

ただJBCへの不信感で悲しい気持ちにはなった。
 2020年の田中恒成戦でもドーピング疑惑に巻き込まれ、JBCのずさんな検体の管理が明らかとなり、井岡側の弁護士が用意した大学の教授が、尿が腐敗したことにより、大麻成分が検出されたことを主張して、当時のJBCの理事長が謝罪するに至った。
「前にもこの件があった。(検体を)どう扱って、どう(検査に)もっていったかなどが明確にわからない。それと発表の時期が遅い。大晦日の試合が終わってから、5、6か月も経過しての発表では、僕たちも戸惑う。今回の試合が終わってから発表するべきとは言っていない。もっと早く発表すべきで、このタイミングでは、悪意なり、中止させようと(したとの)不安も抱く。出たものは、仕方がない。もっと早ければ対処もできた」
 本音をぶちまけた井岡は、メディアに“お願い”も付け加えた。
「この発言をおもしろおかしく書かないでくださいね」
 大麻成分が検出されたという事実だけは動かしようはないが、井岡が指摘するように、ガバナンスを強化しすぎて、物事の決定にスピード感のなくなったJBCの組織運営にも問題はある。

 リング上で井岡はファンに「戦い続けること」を約束した。
「ここまできたからこそ言えること。もしかして負けていたかもしれないし、その恐怖と常に戦っている。負けたら終わりではなく、自分が終わりだと思ったら終わり。ボクシングの世界は甘くないが、人生で考えると、そう浅はかなことではない。できてもできなくとも、戦い続けること、挑戦し続けることを人生として見せていきたい。ボクシング人生が、1試合でも1年でも長くできるなら戦う場でそれを伝えたい。いつ終わるかもしれないが、横を向けば(応援してくれている人達と)共に走り続けている自分でありたい」
 具体的なターゲットは、WBC同級王者の“ビッグネーム”フアン・フランシスコ・エストラーダ(33、メキシコ)だ。
「個人的には、あと少しで戦えるところまで来ているエストラーダとの試合を実現したい」
 今回は、TBSとは予算で折り合いがつかずに、ABEMAで6200円の高額での独占有料配信となった。だが、大晦日であれば、TBSの放映料がアップするため、陣営は、再び地上波復帰も視野に入れてエストラーダとの本格交渉をスタートするという。WBAの指名試合が絡んでくる可能性もあり、エストラーダ戦の実現は簡単ではないが、エストラーダ戦の先、井岡が返上したWBO王座を衝撃的なKO勝利で獲得した中谷潤人(25、M.T)との統一戦の可能性もゼロではない。中谷との指名試合を避けてWBO王座を返上した際、SNSでは「逃げた」などと叩かれた。だが、井岡は、あえて無冠になるイバラの道を選び、ダイレクトリマッチを最優先順位に置いた。
 実は、フランコ側は、当初、エストラーダと死闘を繰り広げたローマン・ゴンサレス(ニカラグア)との防衛戦を交渉していた。だが、井岡陣営は赤字覚悟で、ロマゴン戦以上のファイトマネーをオファーして、この試合を実現した。中谷との指名試合であれば、金銭的にはプラスだったが、それを捨ててまで再戦を優先させたのである。
「その時がきたら、そういう選択(中谷戦)もする。別に彼(中谷)を避けているわけじゃない。今戦いたい選手と、その時がきたら戦うだけ」
 井岡は、そう断言した。
 “逆風”の風向きを、井岡は、覚悟と結果で変えて見せた。
 もうドーピング問題は語らなくていい。ただ前を向き、我がボクサー道を突き進めばいい。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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