「峠を越えた?今がピーク。年下なんかに負けられない」なぜ井上尚弥は中谷潤人に「たられば」を許さなかったか…“名参謀”真吾トレーナーに聞く真実…あの「ハロー?ソーリー」事件の真相も
その「たられば」を問う筆者の質問を真吾トレーナーは一蹴した。
「それはやろうとしてもできなかったと思いますよ。こっちはさせない。それができるならラウンドなんて関係ないじゃないですか。8ラウンド前のゴーサインは『いけ』ではなく『いかなくちゃ勝てないぞ』だったんじゃないですか」
しかも、井上はここまで6ポイントはリードしているという陣営の計算もあって終盤に勝負するための「体力の温存も考えポイントを譲ってもいい」と、あえて8、9、10ラウンドを捨てた。8ラウンド、9ラウンドは2人、10ラウンドは3人が中谷にポイントをつけた。
それもすべて尚弥のプランだった。
11ラウンドに決定的な出来事が起きる。
尚弥の右アッパーが中谷の左目を直撃、中谷は目をあけてられなくなり、左ガードで、その目を覆い、ディフェンスに回ったのだ。
試合後の検査で眼窩底骨折であったことが判明したが、真吾トレーナーは「自分はスパー中でしたが、眼窩底をやったことがあり、すぐにわかりました。ピリっと激痛が走るんです」という。
しかし尚弥は手負いの中谷にトドメを刺さなかった。
一夜明け会見で尚弥は「叩きのめそうという気持ちが100%ではなかった。複雑だった」と、それが武士道に通じるフェアプレー精神による“ためらい”であったことを明かしている。
真吾トレーナーは、「その気持ちは本人でないとわからない」とした上で、こう私見を述べた。
「眼窩底骨折を察知できていたけれど、なんでもできるわけじゃない。手負いとなり逆に必死に『やられてたまるか』と左のストレート、フックを合わせそうとしてきていた。だから最後まで圧をかけながら、フェイント、フェイントと指示していたんです」
KO決着とはならなかったが、116-112が2人、115-113が1人の3-0判定勝利を手にした。
尚弥も真吾トレーナーもその2ポイント差のジャッジには納得がいかない。真吾トレーナーは、映像を見直したところ「一歩引いて見ても4ポイント差。2ポイント差は考えられない。何を基準にしているのかを統一してもらいたい」と訴えた。
115-113と採点したのは米国のラウル・カイズ・ジュニア氏。2年前の東京ドーム大会も含め何度も来日しているベテランで年末のサウジでの尚弥対アラン・ピカソ(メキシコ)戦のジャッジも務めている。

