「死んでもいい覚悟」なぜ石井武志は井上尚弥に「俺の記録を抜いちゃったね」と驚かせた衝撃の65秒KOでWBA王座を奪取できたのか…綿密な陣営の作戦と「大橋ジムで一番の努力家」
武居は、行動を共にしている石井にこれまで改めて何か助言や言葉をかけることはなかった。だが、その計量後にlineでこう伝えたという。
「みんな一緒に戦うつもりでいる。自信をもっていけよ」
リング上で石井は自らの人生をこう表現した。
「福岡の田舎で育ち、小学校の頃から(背が小さくて)いつも一番前。何の才能もない僕が、ひとつのことを努力すれば夢が叶うことを証明できたことが嬉しい」
それは石井だからこそ伝えることのできるメッセージだった。
「性格的に決めたことはやらないと嫌。ボクシングで世界チャンピオンになると決めて、福岡を出た時に、絶対にこうなることを思ってやってきた」
このベルトは9月27日にWBOの同級王座決定戦に挑む松本流星(帝拳)が返上したものだった。松本が王者になれば日本人同士の統一戦への期待感が高まるが、互いに「ベルトの価値を高めてから戦いたい」との思いがある。
石井は「ミニマム級にはまだまだ強い選手がいる。せの選手達に挑戦していきたい」と言う。
ミニマム級で最強の言われていたWBAスーパー&WBO同級王者のオスカル・コラーゾ(プエルトルコ)が、10月10日に2階級上のWBC&WBA世界フライ級王者のリカルド・サンドバル(米国)に挑戦することが決まり、統一戦のターゲットとしては、WBCのシャコルワ・クセ(南アフリカ)、IBFのペドロ・タドゥラン(フィリピン)の2人に絞られるが、石井の志は高い。
大橋会長の腹つもりはこうだ。
「もちろんチャンピオン同士、ちょっと体は小さいんですけど、複数階級とかを戦っていかないと軽量級は注目はされない。そういった役目も石井にもある。またミニマム級でこれだけのKO率があって、最短記録を作るぐらいのパンチ力があるので、それを最軽量級で見せていくのが彼の義務」
発表された観客は1829人と寂しい数字だった。だがこの場にいた人々は、ボクシング史に残る伝説の1日と、そして軽量級の世界へ新風を吹き込んでいく新モンスターの誕生の瞬間に立ち会うことができたことを永遠に語り継ぐだろう。

