「亀田京之介は神風を吹かせた。パンチは中谷潤人より強かった」1-2判定負けも”浪速の狂犬”がエルナンデスに大善戦…「偉そうなことを言って負けた。オレはこのレベルにないんかな」
この試合は中谷が苦戦したエルナンデスを相手に京之介がどう戦うかという、間接的に中谷と京之介が比較される試合でもあった。
前日計量の後に京之介は「(中谷と)一緒にすんなよ。中谷戦を越えますよ、余裕で。(中谷とは)全然レベルが違う。倒しますよ」と豪語していた。結果的に比較論でも中谷を上回ることができなかったが、京之介は、こう強がった。
「負けていて、これ言うのはださいけどセバスチャンも(それに苦戦した)中谷もこんなもんか、たいしたことがないと正直思う」
一方の勝者のエルナンデスは京之介を称賛した。
「彼は強いハートで最後まで戦った。日本を代表している偉大な選手だった」
京之介の左を被弾した右目は腫れていた。
そして筆者に”神風”という言葉の意味を確認した上で「強いファイター。彼は神風を吹かせた」と言った。
つまり番狂わせを起こされかけたことを認めたのだ。
京之介が意識していた中谷との比較を聞く。
「中谷はレパートリーが多い。亀田はとてもパンチが強い。亀田の方がボディは強かった。フィジカルも鍛えてるいるなと思った。ただディフェンススキルがないから、パンチは顔面にあたった。そこはまだまだ発展途上だな。でも前へ進み続けるファイターだ」
京之介はオープンブローが目立ち「パンチがない」方のボクサーとして分類されているが、エルナンデスの評価は意外なものだった。
キャリア6敗目を喫した京之介は、「6敗しているけど心は折れていない。むしろ、また頑張ろうと思った」と現役続行を宣言した。エルナンデスにここまで言わせる大善戦をしたのだから当然の決断だろう。
ただエルナンデスとの再戦は求めなかった。
「びびってんじゃないけど、再戦はやりたくない。やるならセバスチャンよりネリ」
京之介は今後のプラン変更を決意していた。
当初、「世界挑戦のための資格を取るため」12月に日本フェザー級王者の岡本恭佑(HKスポーツ)への挑戦を熱望、計画していた。
だが「なくなるんじゃないですか。(プロモーターの亀田)興毅にも言われた」と言い、こう明かした。
「偉そうに勝てると言って負けた。ネリ、ピカソに負けて(自分は)このレベルじゃないんかなと思った。日本ランカーを(対戦相手として)連れてこられた時、”なんでこんな相手とやらなあかんねん”と思っていたけど、これが答え。自分に合ったレベルの相手、日本ランカーとやっていき、日本チャンプになったら世界ランカーとやっていけばいい。またゼロから」
元3階級制覇王者のルイス・ネリ、当時スーパーバンタム級のWBC1位だったアラン・ピカソ(共にメキシコ)、そしてカシメロ、エルナンデスというビッグネームと4戦連続で戦ってきたが1勝3敗。京之介は、もう一度、足元をみつめ直すことを決意した。その決断は正しい。
京之介は、驚異的なタフネスで前へ出続け、パンチを出し続けてきたエルナンデスと逃げずに打ちあった。その魂のこもったファイトは、22戦のキャリアで中谷に1敗しかしていない世界ランカーに「神風」だと認めさせた。突飛で過激な言動でSNSを度々炎上させる”話題先行型の男”が、そのファイトでファンに感動を与える本物のプロのボクサーになってきた。エルナンデスが指摘するようにまだ雑な面はある。スタミナも足りない。オープンブローも修正しなければならない。
だが、亀田京之介を見直した。
うす暗いバックステージで見せた京之介の”漢の悔し涙”に胸を打たれた。もう口だけのボクサーではない。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

