“神の左”か、”琉球の破壊王”の左か…井上尚弥を狙うバムのスーパー王者格上げで”二重王座”が解消し「綺麗な形になった」WBA王座決定戦に挑む増田陸は比嘉大吾を倒して世界を獲れるのか?
スパーは頑丈なメキシコ人のガチガチのファイターを招聘し、120ラウンドを消化した。
「自然な形でKOできればいい」
ドネア戦は「真剣での斬り合い」と表現した。そして比嘉戦は「真剣で向かってくる相手にライフルを打ち込む展開にしたい」と表現を変えた。
増田の武器は神の左と呼ばれるストレート。比嘉が、武居由樹(大橋)、堤聖也(角海老宝石)、アントニオ・バルガス(米国)の世界戦でダウンを奪ったのはいずれも左フック。
言わばヤリと鎌の戦い。増田の勝機は真剣を使ってのつばぜり合いにはない。接近戦は避けてミドルレンジ、あるいは、ロングレンジのポジションから”神の左”を打ち込む直線を生かした縦のボクシングだろう。
比嘉と同じ左フックを武器にするドネアを封じたことも自信になっている。
「一発のある選手なんでディフェンスを意識して練習に取り組んでいる。的を絞らせない、ガードもそう。ドネア戦でやってきた対策もつながっている。基本的には軌道を外すという意味では左フックに関しては同じような対策になる」
一方の比嘉はライフルで狙いを定めることのできない距離でボクシングをしたい。野木トレーナーも作戦の一端を明かす。
「ここ3試合は全部判定。武居戦は、ほとんどの人がKOと言っていたが、僕の予想は判定だった。ドロドロの展開に持ち込めるとこっちのペース。そうなると判定の可能性も高い。楽なことは考えないように、フルに戦ってやっと勝つみたいなイメージ」
比嘉陣営からしても、ドネアの左をどう封じたかという増田の対策を見ることができた意味は大きい。その対策のもうひとつ先を考えた作戦を練っている。
「ドネアの左フックとは角度と軌道はちょっと違うが参考にはなる。ドネアの方が鋭角的なんですがね。大吾に打たせたいパンチはいくつかあります」
マル秘パンチを用意していることを明かした上で、こう続けた。
「おそらく増田選手にとっても、大吾の入る力、入るタイミングは未知のもの。こっちはそういうものを発揮する戦いにしたい。ただ決め手がそうとうある選手。左はもらいたくない。急所にもらうと倒れちゃう。よりナーバスにいきたい」
野木トレーナーは、4年前に増田が「井上尚弥 4団体統一記念バンタム級モンスタートーナメント」の準決勝で、当時の日本王者だった堤聖也に判定負けを喫した試合を見て「いつか大吾とやる相手」と意識していたという。
一方の増田も中学生の頃にWBC世界フライ級王者となった比嘉の姿を見て「いつか拳を交えてみたいなと思っていた」と振り返った。
増田は記者会見で、勝った後のリング上で次に戦いたい相手を表明すると明かしていた。休養王者の堤聖也なのか、それともバムなのか。
「目の前の比嘉選手に対してこの状況で次の試合の発言をするというのは失礼。比嘉選手との試合に集中して、その先に見えてくるものは、リング上で自分の手が上がった時にはっきりとしてくる。当日のお楽しみということでお願いします」
そう言って笑みを浮かべ、モチベーションの話をした。
「ここまでの道程を振り返って確認する作業はしてきた。気持ちの面でもボクシングの面でも。プロデビューしたのが4年前。自分の夢というものから始まって、試合を重ねるごとに応援してくださる方がどんどん増えて、自分の夢がいつしか皆様の願いになって、それが今の自分の力になっている。結果を出して恩返しをしたい」
2人の運命はどこへと導かれているのだろう。

