日体大の箱根駅伝79年連続出場の裏にあったドラマ…「選手に重圧を背負わせたくない」主将欠場と集団走の決断
日体大にとって79年連続出場は、単なる数字ではない。何世代にもわたる選手たちが積み重ねてきた歴史そのものだ。玉城監督も現役時代に、伝統のタスキをつないできた。しかし、学生たちにその重荷を背負わせないことを大切にしてきたという。
「今でも選手たちに(連続出場の重圧は)背負わせたくありません。やっぱり毎年毎年のチームですから」
一方で長年積み重ねてきた記録の価値も強く感じている。
「連続出場というのは大学としての財産です。これだけ積み上げてこられたのは、いろんな人の汗があるわけです」
連続出場は大学にとってかけがえのない財産だ。しかし、今の選手たちにとって重要なのは、自分たちの力で目の前の予選会を突破すること。その両方を尊重したいという思いが、指揮官の言葉から伝わってくる。実際、選手たちは連続出場について、あえて口にすることが少なかったという。
伝統を背負うのではなく、自分たちの一戦に集中する。その姿勢が、苦しい展開を乗り越える力になったのかもしれない。
その象徴が、チームトップでフィニッシュした夏見虹郎(2年)の言葉だ。
夏見は今年1月の箱根駅伝で、1年生ながら10区を区間7位と好走。今回の予選会では集団走には加わらず、フリーでタイムを稼ぐ役割を担った。
結果は1時間2分52秒の個人35位。自身の走りについては「50点ぐらいかな」と厳しく評価した。しかし、チームの結果については評価が一変した。
「伝統をつなげるという面や、自分たちがずっと目標にしてきていたことを今日は達成することができた。チームとしては100点満点かなと思います」
実は夏見自身も、万全の状態ではなかった。レースの約2週間前にインフルエンザにかかり、5日間ほど走れなかったという。それでも、不安なくスタートラインに立つことができた。
「自分がいなくても、このチームは絶対箱根に導いてくれるだろうと信じていたし、自分がいなくてもチームは絶対に箱根に行くっていうのを信じていたんです」
仲間への信頼があったからこそ、自分の走りに集中できたのだろう。夏見は箱根本大会で走りたい区間について、迷わず「2区」と答えた。
「自分はやっぱりエース区間である2区。第二希望としては1区。テレビがいっぱい映るので」
笑いを交えながらも、各校のエースが集まる花の2区での挑戦に意欲を見せた。ただし、玉城監督は夏見に対して「謙虚に走ってほしい」と注文をつけた。予選会の結果に満足せず、さらなる成長を促しているのだ。
今回の日体大は、出走した4年生が2人。2年生の夏見、個人52位の佐藤大和(3年)など3年生以下が主力を占めるチームだ。次回の第104回大会からは、出場校が通常大会で「3校」増枠する。最後の「10校」を争う予選会を突破した意味は大きい。窮地を乗り越えたといえるかもしれない。
学生主体のメンバー選考と集団走でつかんだ79年連続出場。そこにあったのは、伝統の重みに押しつぶされることなく、目の前の一戦に全力を尽くす選手たちの姿だった。
(文責・酒井政人/スポーツライター)

