鎌田大地はフランクフルトの欧州リーグ優勝に貢献した(写真:なかしまだいすけ/アフロ)
鎌田大地はフランクフルトの欧州リーグ優勝に貢献した(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

欧州で市場評価上昇中の鎌田大地を森保監督は使いこなせるのか?

ブンデスリーガでは相手のライン間を巧みに動き、ベストのスペースでボールを引き込むプレーが、ドイツ語で「ラウムドイター」(スペースを見つけ出す者)と称賛された。ベストのスペースは、すなわち相手が嫌がるポジショニングとなる。

 その上で鎌田は自分自身を「世界のトップ・トップで考えるとまったく足が速くないし、ましてやフィジカルの強さもない」と客観視する。4-3-3のウイングや4-2-3-1のサイドハーフではストロングポイントを発揮できず、サイドハーフで起用されて精彩を欠いたFW古橋亨梧(27、セルティック)の二の舞になってしまう。

 鎌田は2019年の森保ジャパンで1トップも経験している。同年10月のモンゴル戦では代表初ゴールもマークしたが、後に苦笑しながらこう語っている。

「要求されたポジションで頑張りたいけど、1トップは僕のなかでは難しい。ストライカーみたいにどんどん点を取れるタイプではないので」

 しかし、1トップを担い続けてきた大迫勇也(32、ヴィッセル神戸)がコンディション不良で選外になった。森保監督は大迫の武器のひとつ、ポストプレーができるアタッカーとして鎌田を考えていると明かした。

「前線でタメを作れる選手だと思いますし、いまは前線で起点になりながらも最後、ゴール前へ飛び込んでいく迫力もすごく出しながらプレーしているので」

 インサイドハーフを含めた未知数のポジションに、苦手意識を抱いている1トップ。3バックが試された場合には、フランクフルトと同じシャドーでプレーする可能性もある。6月シリーズであらためて可能性を試されようとしている鎌田はかつて、アジアの先に待つワールドカップでの戦い方をこう思い描いていた。

「僕たちがボールを持てない時間帯が続く。その意味でもいい守備からいいカウンターを仕掛ける形が、上のチームに勝つためには非常に大事になってくる」

 いまとなってはドイツ、そしてスペインとの戦いが対象になる。その上でカウンターを成功させる中継役として、自分の存在価値があるとも力を込めた。

「みんなによく言っているのは、相手が自分の後ろにいても、無理にでも僕に当ててくれていいと。相手が後ろにいると、リスクがあるという理由でボールを下げがちになりますけど、相手にとってはそこで僕に通される方が一番嫌がるはずなので」

 瞬時の判断に導かれるポジショニングと、受けたボールを確実に前線へ配球する自信があるからこその言葉。他のアタッカー陣との兼ね合いやチーム事情もあるが、やはり鎌田の最適解はトップ下かインサイドハーフになるのではないか。

 ドイツの移籍専門サイト「Transfermarkt」は昨夏の時点で、鎌田に2500万ユーロ(約34億円)の市場価値をつけていた。2021-22シーズン前半の不振で、昨年末には2200万ユーロ(約30億円)に下がっていたが、ヨーロッパリーグでの大活躍をへて、今夏の移籍市場では早くも「Daichi Kamada」の名前が登場している。

 昨夏も移籍先として報じられたプレミアリーグのトッテナムや、ラ・リーガ1部のセビージャが再び浮上するなど、フランクフルトとの契約を来夏まで残す鎌田に設定された、違約金3000万ユーロ(約41億円)に市場価値も近づきつつある。

 新顔をDF伊藤洋輝(23、シュツットガルト)だけにとどめた森保監督は、6月シリーズの目的をチーム力の熟成にすえている。そのなかには一度は選外とした鎌田が放つ、ヨーロッパ組のなかで最もまばゆい輝きを代表に還元させる作業も含まれる。

「今回は活動期間全体が大切になる。1試合ごとに課題を抽出しながらコンセプトを確認して、ベースの上積みとオプションの幅を広げていきたい」

 トータルで16日間におよぶ活動をこう位置づけた森保監督にとって、鎌田を戦力として組み込めるかいなかで、あらためてその手腕が問われる。すでに多くのヨーロッパ組が帰国しているなかで、パラグアイ代表戦(6月2日、札幌ドーム)から始まる国内4連戦へ向けた森保ジャパンのキャンプは30日に幕を開ける。

(文責・藤江直人/スポーツライター)

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