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辰吉寿以輝(右)が左の拳を痛めながらも判定勝利(写真・山口裕朗)
辰吉寿以輝(右)が左の拳を痛めながらも判定勝利(写真・山口裕朗)

なぜ“カリスマ”辰吉丈一郎は岡山のジムから初の世界王者ユーリを称え、拳を痛めKOできなかった次男の寿以輝を「無冠じゃ飽きられる。辰吉の名前だけじゃ」と厳しく突き放したのか?

 辰吉はユーリとの面識はない。
「岡山からの2人目の世界王者?同じ岡山人としてうれしいね。その昔、藤猛さんが、岡山の出身ではないが、“岡山のおばあちゃん見てますか?”とやって勝手に刷り込まれたこともあったけどね」
 元WBA、WBC世界スーパーライト級王者の藤猛がハワイ出身の日系人だったにもかかわらず「岡山のおばあちゃん見てる?」とテレビインタビューで答え、ファンの支持を受けたエピソードを紹介した。
 ユーリのリングネームは、WBC世界フライ級王座を9度防衛した“輸入ボクサー”勇利アルバチャコフにあやかり、守安会長が命名したもの。
「まだまだ本家には及ばない。もっと強くなりたい」とユーリは言う。
 10年目の結実。「ここからがスタート」と付けくわえた。
 会場には、大橋秀行会長とOPBF東洋太平洋王者の桑原拓(大橋)の姿があった。2年前の日本タイトル戦では、最終回に桑原はユーリに倒されている。世界戦の舞台でリベンジを…ユーリの初防衛戦の有力候補の1人だ。

 
 一方、辰吉は、アンダーカードで行われた“次男”寿以輝の2-0判定勝利には厳しい言葉を送った。第1ラウンドは超攻撃的スタイルから連打を繰り出して、那須川天心が倒せなかった与那覇に対してKO勝利の期待を持たせたが、3ラウンドから一気にトーンダウンし明らかに手数が減った。実は左の拳を1ラウンドに痛め、思い切り打てなくなっていたのだ。
 辰吉もすぐ息子の異変を察知した。
「手を痛めたからな。あれだけ殴り合うのが好きな人間が手を出さない。痛いんやろうな。ごまかすために手を出した。このレベルでそうなったので教訓になったやろ」
 それでも寿以輝は、小さなパンチをコツコツと放ち、4ラウンドには左ボディから右フックのコンビネーションで動きを止め、一気にラッシュした。最終ラウンドを取られていれば、ドローだったが、執念でワンツーから左フックを浴びせて打ち合い、なんとか76―76、77-75(2人)の判定で勝利を手にした。
「無事に勝てたので良かったと思う」
 それでも寿以輝の自己採点は20点。
「ボクシングなんで。判定もあるでしょう。気持ちも強い選手だった。けっこういいパンチだった」
 対する与那覇は「ペースを握られないという勝負強さを感じた。判定を聞く前に負けたと思った」と敗戦の弁。天心と寿以輝にKOされなかった男は2人の比較を聞かれ「タイプが違うんでね。やったら(対戦したら)面白んじゃないですか」と答えた。ただ、帝拳と大阪帝拳は、事実上の同門ジム。2人の対決は今後もあり得ないのである。

3-0判定勝利でユーリ阿久井がWBA世界フライ級王座を奪う(写真・山口裕朗)

 

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