「やる前から負ける話をする人がどこにいるんですか?」4戦連続世界戦でWBA王座に挑む比嘉大吾が変わった…”井岡イズム”感化と「12回耐え抜いてのフルスイングKO」覚悟
トリプル世界戦(7月20日、両国)のメインで行われるWBA世界バンタム級王座決定戦で、同級1位の増田陸(28、帝拳)と対戦する元WBC世界フライ級王者、比嘉大吾(30、志成)が8日、目黒区の志成ジムで公開練習。異例の4戦連続の世界戦で直近の2戦は連続ドローに終わっているが、大変身した姿をアピ―ルした。
「今までは自分というものがないから勝てなかった」
太陽みたいに明るい。
増田が「人柄がわかる」と口にしていたが、比嘉を嫌いな人は倒されたボクサー以外に世の中にそう何人もいないだろう。
先月の発表時に”二重王座”になっていた世界戦が正規王者のジェシー“バム”ロドリゲス(米国)がスーパー王者になり、晴れて問題が解消するも、「世界戦か、ノンタイトル戦かって、問題になっていたじゃないですか。(ファイトマネーの)額が一緒なら僕のモチベーションは変わらない」と言い、「帝拳さん、ありがとうございます」と言って、メディアを笑わせた。
自身がダウンの応酬でドローに終わったアントニオ・バルガス(米国)がバムに6回で倒されたものの、そこまであわやの好勝負をしたが、試合のことより「(ファイトマネーは)いくらだったんですかね」と、そこが気になる。
公開練習では、野木丈司トレーナーが「全部を見せない」とミット打ちはやらなかったが、シャドー、通常のサンドバック、壁に固定した特殊なサンドバックを1ラウンドづつ消化した。壁のサンドバックでは、時折、サウスポーにスタンスを変えながら、迫力満点の左右フック、ストレート、アッパーを打ち込んで見せた。
日本では過去に例のない4戦連続の世界戦。
「もう1回チャンピオンになりたい。今まで以上にその気持ちがあったから、いい調子に仕上がっている。自分に期待してるところはありますね」
2024年に当時のWBO世界同級王者の武居由樹(大橋)に挑みダウンを奪うも僅差判定負け、2025年2月にWBA世界同級王者の堤聖也(角海老宝石)に挑戦するも、ダウンの応酬の末ドロー。7月に同正規王者に昇格していたバルガスに試合間隔をそう空けずに拳を交え、4回に先制ダウンを奪うも、最終ラウンドにダウンを奪い返されて2戦連続のドロー。そのミスがなければ勝っていた。
筆者は、今回の比嘉の勝機は、増田に何が勝ってる、のではなく、2試合連続ドローで何が足りないかを知ることだと考えていた。
会見で、その質問をすると、比嘉はしばらく考えて、隣に座っていた野木丈司トレーナーに救いを求めたが「それはダメ」と釘を刺すと「もう自分でも分からないんで、本当にみんなに”なんで取れなかったんですか?”って、いろいろ聞いてるぐらいなんです。その答えが全部あてはまっている」と苦笑いを浮かべて返した。
「気持ちだったり、練習に対する姿勢だったり、プライベートのことも含めて、いろいろ全てじゃないですかね」
曖昧は返答だったが、その答えを比嘉はしっかりと見つけていた。
二人三脚で比嘉を指導してきた野木トレーナーが明かす。
「今までは自分というものがないから勝てなかった。だから、今度は自分というのをどんなときも持っていたい」
比嘉はそう言ったという。
「そういう意識を持ったのは初めてですよ。本当の意味で自分との勝負になるんじゃないですか」
WBC世界フライ級王者時代は、ボクシング動画を見るのが好きで「ボクシングの話するのも好きだった」そうだが、計量失格で王座を失い、ヨレヨレ状態のまま契約体重で行ったその世界戦でTKO負けして、無期限のライセンス停止処分を受け、のちに解除されるも2年ものブランクを作り、「そういうことするのがなくなった」という。
「ボクシングが好きか、嫌いかで言えば嫌いの方になっていた。それが今は自分のスパーの映像をみたり、いろんな他の試合の話をしたりしている。ボクシングに興味を持つようになった。それが大きい」
野木トレーナーは、比嘉の変化をそう証言した。

