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日本代表経験もない8年目の伊藤涼太郎のベルギー1部クラブへの移籍が決定(写真:西村尚己/アフロスポーツ)
日本代表経験もない8年目の伊藤涼太郎のベルギー1部クラブへの移籍が決定(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

なぜ日本代表経験もないプロ8年目J1新潟MF伊藤涼太郎のベルギー1部クラブへの海外移籍が決まったのか?

 レンタル先で実戦経験を積みながら能力を開花させた選手が、復帰した古巣で活躍するケースは多い。Jリーグも18歳から23歳までの若手の成長を後押しするために、下位カテゴリーのクラブへの期限付き移籍を、移籍期間外でも可能にする育成型期限付き移籍制度を2013シーズンから導入。伊藤もその制度下で、水戸へ2度期限付き移籍している。
 一方でレンタル期間を終えても戻れる場所がある状況が、場合によっては甘えや慢心の類を生み出しかねない。プロ入り後の自分と真正面から向き合った伊藤はあえて退路を断ち、自らに重圧をかける背水の陣を敷く覚悟を決めて新潟へ完全移籍した。
 そして昨シーズンの伊藤は、全42試合に出場してチーム最多タイの9ゴールをマーク。アシストも11を数え、新潟のJ2優勝と6年ぶりのJ1昇格の原動力になった。
 周囲を生かし、そして生かされる。プロになった伊藤が初めて居場所を築いた新潟は、ほぼ同じメンバー構成で今シーズンの戦いに挑んでいる。昨シーズンの延長線上にあるJ1の戦いで、潜在能力を開花させつつあった伊藤が大ブレークする状況が整っていた。
 ペナルティーエリアの外からゴール左隅へ強烈なミドルシュートを決め、J1初得点をマークしたのはわずか3か月前、3月4日の北海道コンサドーレ札幌戦だった。続く川崎フロンターレ戦でもペナルティーエリアの左角あたりから決勝ゴールを叩き込み、4月15日のアビスパ福岡戦ではハットトリックを達成して逆転勝利に貢献した。
 今シーズンのJ1リーグでは、トップ下として全16試合に出場。新潟で最多、リーグ全体では8位タイとなる7ゴールをマークし、アシストも4つを数えている。期限付き移籍ではなく完全移籍を選択し、覚醒と言っていい活躍につなげた軌跡は、今シーズンのレアル・ソシエダで最も充実したプレーを演じた日本代表MF久保建英(22)をほうふつとさせる。
 戦っているリーグやキャリアを含めて、久保とはすべてが異なる。出場資格があった東京五輪も、代表メンバー入り争いにほとんど絡めないまま応援する側へ回った。もちろんA代表の経験もない。今回の6月シリーズでの待望論も高まっていたが、招集されなかった。
 それでも久保との共通項として、伊藤はこう語ったこともある。
「やはり期限付き移籍よりも完全移籍で加わった方が、選手は覚悟を持って新しいチームへ行く。そういったところで、プレーは大きく変わると思っています」
 ゴールも奪える司令塔の存在は、瞬く間に海外へも知れわたった。
 シントトロイデンへの電撃移籍が合意に達する前には、スコットランドの名門セルティックが興味を示していると国内外で報じられた。今シーズンの目標としてタイトル獲得を掲げていた伊藤は、クラブを通じて発表したコメントのなかで、ベルギーでの戦いへ向けた決意も綴っている。
「シーズン途中で移籍することを申し訳なく思う気持ちも強いのですが、この目標はチームメイトを信じて託して、海外で挑戦してきたいと思います。初めての海外挑戦となりますが、自分の活躍を皆さんに届けられるように努力を続けていきます」

 

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