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7月の女子W杯代表メンバーが発表されたが、テレビ放映のメドが立っていない。左から佐々木則夫女子委員長、池田太監督、JFA田嶋幸三会長(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)
7月の女子W杯代表メンバーが発表されたが、テレビ放映のメドが立っていない。左から佐々木則夫女子委員長、池田太監督、JFA田嶋幸三会長(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

なでしこJの戦いが見られない?なぜ女子W杯のテレビ放映&配信が決まっていないのか…W杯メンバー発表も未解決の深刻問題

 しかし、崇高な理念と市場価値との間に大きなギャップが存在する。
 ヨーロッパでは時差の関係で、南半球での試合がゴールデンタイムに生中継されない状況も大きく関係している。一方で日本は、女子サッカーが持つコンテンツ力そのものが影響している。例えばプロリーグとして1試合5000人の集客目標を掲げたWEリーグだが、終わったばかりの2シーズン目の平均観客数は約1400人にとどまっている。
 この状況では、放映権料という形で巨額のマネーを投資する対象にはなりがたい。田嶋会長も「(条件に)隔たりがある、と思う」とこう続けた。
「W杯までにどのような形になるのかは別として、何とかして解決していただき、テレビを多くの国民のみなさんが見て、なでしこジャパンを応援していただける状況を望んでいる。そのなかでわれわれにできることがあるとすれば何なのか。それも含めて考えていきたい」
 カタールW杯の放映権料は日本円で約350億円。これに対してJCから民放の3局が撤退し、最終的にはNHKとフジテレビ、テレビ朝日が地上波で放送。さらに200億円を出資したとされるインターネットテレビ局の「ABEMA」が全64試合を無料で放送した。
 今回の女子W杯ではFIFAが原則的に無料で見られる媒体、つまり地上波を希望して交渉が進められていると見られる。 
 今後は、有料動画配信サービスなども対象に入る可能性もあるが、視聴者が飛躍的に増えるといったリターンがなければ投資対象にはならないだろう。
 今後の可能性として、FIFAの公式ストリーミングサービス「FIFA+」で日本へ向けて無料で放送される状況も考えられる。しかし、田嶋会長は「日本語による解説もない」と断りを入れた上で、地上波で中継される状況の大切さをこう訴えた。
「そういうなかで、いままでなでしこに興味を持っていなかった方々や、なでしこを応援したくなった方々が、あえて入ってくれるかどうかはわれわれも疑問を持っている。FIFAもその点はわかっていて、地上波での放映を前提に、いまも各国と最後の詰めをしていると聞いている。ここから1か月あまり。日本は(番組の)編成などもあるので、いまもギリギリのタイミングだと重々わかっている。それらをFIFAにも伝えた上で、何とか契約をしていただければ」
 女子サッカーの普及という観点から考えれば、高額な放映権料にこだわるあまりに、女子W杯が地上波を含めて一切放送されない状況を生み出せば本末転倒となる。何とかしてFIFAとJCとの間で妥協点を見つけ出せるのか。実況や解説の手配を含めた現地からの中継の準備などを考えれば、テレビ中継実現へ向けて残された時間は刻一刻と少なくなっていく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

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