“悲運のファンタジスタ”小野伸二が今季限りでの引退を決意(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)
“悲運のファンタジスタ”小野伸二が今季限りでの引退を決意(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

“悲運のファンタジスタ”小野伸二が今季限りで引退

 日韓共催大会後に発足したジーコジャパン。ジャマイカ代表との初陣で、ジーコ監督は中盤に中田英寿、中村俊輔、稲本潤一、そして小野を初めて同時起用する「黄金のカルテット」を採用。大きな注目を集めたなかで、小野が先制ゴールを決めた。
 しかし、中田や稲本、小野が怪我を繰り返したなかで全員がそろう試合が少なかった上、ジーコ監督が2004年後半からシステムを[4-4-2]から[3-5-2]へスイッチ。トップ下に中村、ボランチに中田と福西崇史が重用され、さらに左ウイングバックに三都主アレサンドロが定着したなかで小野の居場所は実質的になくなった。
 3度目のW杯となったドイツ大会。オーストラリア代表とのグループリーグ初戦で、小野は1点をリードしていた後半34分からFW柳沢敦に代わって途中出場したが、直後から日本は3連続失点を喫して敗れた。バランスを崩した日本で“戦犯”扱いされた小野は以降の2試合に出場せず、ジーコジャパンも1分け2敗で敗退した。
 新たに発足したオシムジャパンで、小野は一度も招集されなかった。初陣となった2006年8月のトリニダード・トバゴ代表戦に臨むメンバーから漏れた際には、浦和に復帰していた小野は「ドイツW杯にかけていたので……」と複雑な胸中を吐露している。
「ドイツ大会で気が滅入った、というのはある。だからいまはサッカーに飢えていないし、欲がなくなったというか、気持ちが乗ってこない」
 第二次岡田ジャパンの2008年8月のウルグアイ代表戦で、一度だけ復帰を果たした。フランス大会で18歳だった小野を大抜擢し、落選したカズ(三浦知良)の象徴だった「11番」を託した岡田武史監督は、間近に迫っていたW杯南アフリカ大会予選へ向けて「伸二が必要かどうかテストしたい」と、約2年2カ月ぶりに復帰させた理由を説明した。
 しかし、期待に応えられなかったのか。中盤の一角で先発フル出場するも1-3で敗れたウルグアイ戦を最後に、日本代表における小野の軌跡は途切れている。
 クラブでのプレーに専念する形になった小野はしかし、足首や膝などに抱える慢性的な痛みに苦しめられてきた。昨年1月に札幌と生涯契約を結び、現役続行の有無も含めて、すべて小野自身の判断に委ねられたなかで、J1最年長選手として臨んだ今シーズンは天皇杯の2試合に出場しただけで、ベンチ入りした試合もリーグ戦でゼロ、YBCルヴァンカップでも1試合にとどまっていたなかで、スパイクを脱ぐ決意を誕生日に報告した。
 札幌によれば、今後はシーズンの全日程を終えた後に引退会見が設けられるという。ただ、引退を発表してもすぐには選手としての歩みは止めない。インスタグラムへの投稿と札幌を通じたリリースの最後を、小野はこんな言葉で締めている。
「まだシーズン残り数試合ありますが、僕も試合に少しでも関われるように変わらず良い準備をしていきます。最後まで応援よろしくお願いします」
 残り6試合となった現役最後のシーズン。ホームの札幌ドームで行われる12月3日の最終節ではまるで運命に導かれたかのように、小野がプロとしての第一歩を踏み出し、トータルで5年半在籍した愛着深い浦和との一戦が組まれている。

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