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藤原季節は逃げずに殴りあった(写真・山口裕朗)
藤原季節は逃げずに殴りあった(写真・山口裕朗)

「恐怖の世界でした」人気俳優の藤原季節のプロデビュー戦は壮絶1回TKO負け…試合前に読み返したファンの手紙…実力不足も称賛されるべき「逃げずに挑戦した勇気」

「今までは自分のためにボクシングをやるんだと思っていた。どこかの誰かのためにという綺麗ごとは言わないけれど、誰かに力をもらって戦っていたんだなと思って…一人でここまできたんじゃないんだなと痛感した」
 それがリスクを犯してデビューを決断した理由だった。
 朝はロードワークを欠かさず、週に5、6日ジムワークを欠かさなかった。スパーリングでは1日に3度倒されたこともある。
 この半年、俳優としては「リスクしかなかった」。もしスパーで怪我をすれば撮影が中断せねばならない。実際、顔はアザだらけで「メイクさんに消してもらいながら」撮影に臨んだ。ボクサーにつきものの減量も10.2キロ落とした。
「役作りで痩せるよりきつかった。途中体重が落ちない時期があり、メンタル的に落ちました」
 磯谷トレーナの息子でプロボクサーの磯谷大心、広太兄弟もサポートを受けているチャンピオンズアカデミーのサポートを受けて乗り切った。
 プロボクサーとして何かを示すことができましたか?そう問うと藤原は苦笑いを浮かべた。
「1ラウンドKO負けなんで、何も言えないですね」
 ただボクシングに本気で挑戦して約2年…自らに心に刻まれものはある。
「過程は財産。ジムのみんなが俳優じゃなく、ひとりのボクサーとして心を許してくれた。一番の財産。趣味でやるだけで得られない記憶が
刻まれた」
 会場には、綾野剛ら俳優仲間や映画の制作スタッフらが多く駆けつけてくれていた。綾野剛は第1試合が始まる前から席に座っていてリングチェックの際にそれを確認した藤原は「むちゃくや嬉しかった」という。
 藤原のプロボクシングの挑戦はこれが最初で最後なのか、それともリベンジのリングへ立つのか。
「少し時間をかけて考えます」
 そう言葉を濁した。
 10月からは舞台の稽古がスタート。
「それに向けて回復していきたい。外傷よりも精神的、心の落ち込みがひどいのですぐに復活したい」
 トランクスには来年3月公開の映画「赤土に眠る」と刺繍を入れ土色にした。
「主演の映画。俳優として人生がかかっているのでそれをトランクス込めて戦った」
 プロのリングに台本はなかった。
 しかし彼はその2分6秒で確かな誇りと勇気を示した。生半可な覚悟ではなく飛び込んできた藤原の挑戦は、彼の人生観を変えただろう。
(文責・本郷陽一、RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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