「ダウンを取ったら勝ちじゃない」那須川天心「何がなんだかわかんない」採点不服に反論した井上拓真陣営は”自己採点要員”を配置していた…これが帝拳陣営との認識に誤差が生まれた理由だ!
帝拳OBで、現役復帰を宣言した”精密機械”ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)と戦った男として知られる元OPBF東洋太平洋ライト級王者の中谷正義氏(現在中谷ボクシングフィットネスジム会長)も「ジャッジは印象なんでダウンがあるとその印象がその後も引きずられ、そちらの選手の目がいく。いわゆる10-10のラウンドであればダウンを奪った側へ流れることはよくある」という。
だがそれはあくまでも優劣をつけるのが難しいラウンドの話。
大橋会長が「8ラウンドが勝負をわけた」と振り返ったダウンを奪われた次のラウンドで、拓真は前へ出てきた。
インターバルで真吾トレーナーが、まさかのトリプルビンタを張って「やり返してこい!」と気合を入れた。「お父さんがめっちゃ切れていて、やべえなと思った」という拓真はプレスをかけてワンツーから左ボデイ、ダブルの右フックの連打。手数の減った天心が体を揺らして左の上下を放つも、そこに右ストレートをヒットさせた。
天心は、その8ラウンドを取られたことさえ「自分でなかなか理解できない。試合を見てみないとわかんない。謎。わかんない」との疑問を口にしたが、「ダウンの優勢」が影響するレベルのラウンドではなかった。
このラウンド後の公開採点は、天心を76―75で1人が支持、残る2人は77―74で拓真を支持していた。帝拳陣営は、そのアナウンスがうまく聞き取れず、9ラウンドの途中でスタッフから「2人が3ポイント差」と聞かされたという。
「予想より開いていた。もう9ラウンドは始まっていたし残り3ラウンドをとっても引き分けになる。もう一回ダウンを取りにいけ」
浜田代表は葛西トレーナーにそう指示を出したそうだが、その9ラウンドも失っており、4ラウンド以降のセルフジャッジもまた間違っていたのである。結果的に両陣営のセルフジャッジの差が勝敗を分けることにもつながったのである。
今回のジャッジはWBCが決定し、プロモーターである帝拳サイドが認めたもので、米国人2人、メキシコ人1人のオール外国人で構成された。大橋ジムの意向を組み入れた第1戦の日本人2人、メキシコ人1人の構成とは異なったが同じくフェアなメンバーを担保していた。なのに、なぜ拓真陣営と帝拳陣営のセルフジャッジにここまで大きな差が生まれたのか。

