「井上家のオーラで熊が近づけなかった」WBC王者井上拓真が天心との再戦に「自分に負けて他団体にいくんじゃないですか。何回やっても勝てない内容で返り討ちに」と豪語した自信の根拠は何か?
プロボクシングのWBC世界バンタム級王者、井上拓真(30、大橋)が15日、横浜の大橋ジムで、那須川天心(28、帝拳)との再戦に向けての公開練習を行った。「最後自分に負けて他団体にいくんじゃないですか。もう一回やりたいと言えないくらいの内容で返り討ちにしたい」と豪語した。その自信の裏には、熊の出没が危ぶまれた8月の北海道合宿で「井上家のオーラで熊が近づけなかった」ほどの井上家の結束があった。

実にいい。
井上拓真が振り切った。
「これが最後だ」
これが今回の拓真vs天心の再戦のキャッチフレーズ。
「最後自分に負けて他団体にいくんじゃないか」
その意味の解釈を聞かれ、さらっと凄いいことを言った。
天心が拓真に敗れ、IBFやWBOのベルトに照準を変えるのではないかとの意見だ。
「もう一回やりたいと言えないくらいの内容で返り討ちにしたい」
戦前予想は拓真が圧倒的に有利だ。英大手ブックメーカー「ウィリアムヒル」のオッズは拓真勝利を1.36倍、天心勝利を3.0倍としている。前日の公開練習で天心は「こんなに負け予想が多い試合もない。そういった概念や思いを本当にひっくり返してやりたいと発言した。その発言へのリアクションを求められ、「簡単にはひっくり返えせない。この井上拓真の壁は大きいぞというの しっかり見せつけていきたい」とキッパリ。さらに新宿の歌舞伎町の野外で行われた公開会見では、天心が「預けているものを返してもらう」といったが「別に預かっているものはない」とスルーした。
昨年11月の前戦では1,2ラウンドは天心のカウンター戦略にはまってコントロールされ、ポイントを失った。天心は、サウスポーと身長差を生かした遠い距離からのボクシングに自信をもっているが、「もうあの展開はない」と、そのボクシングが通用しないことを強調した。
天心は4月のファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)戦からスタイルを変えた。
拓真も「より攻撃的になった」とも見ている。
踏み込んで打てるようになりパンチに体重が乗る。天心は打撃戦も辞さぬ覚悟。視察した葛西トレーナーは、改めて「挑戦者、いかざるをえたい」と発言した。だが、打撃戦になるとサウスポーの利点が消え、拓真の得意な領域の戦いとなる。
「試合が始まってみないとわからない。距離を使うなり、前に出てくるなり、どの展開になっても、自分の方がボクシングの引き出しは多いと思っている。自分は本当にどっちでも対応できるタイプ。その都度、1戦目同様にやるだけ」
試合展開に関しては慎重にコメントしたが、「できればKO。完封したい」とのイメージを掲げた。
2度ダウンを奪った5月2日の元4階級制覇王者、井岡一翔(志成)戦ではジャッジの一人がフルマークをつけた。その完封の再現である。
その自信は、どこからくるのか。
真吾トレーナーが「「前回に引き続き右肩上がり。何をやらなきゃいけないあをより考えるようになった。ボクシングの奥深さや、相手のこともイメージしながら動いている。それがより濃く伝わってくる。気持ち入ってんだなというのが、しっかり伝わってきている。作ってきた引き出しを瞬間、瞬間でより多く出せるようになっている」と明かした。
拓真も正確性と精密性を追い求めていると明かした。
どんな体勢やタイミングでもバランスを崩さず、ベストポジションでパンチを放つ。その究極形が井上尚弥である。
公開練習はシャドーとミットの2ラウンドだけだったが、ステップの速さ、バランスの良さ、そしてスピードは、報道陣を静まり返らせるほどの緊張感があった。
スマホで動画撮影していた葛西トレーナーは「速い。チャンピオンのボクシング」との感想を口にした。
8月10日から井上尚弥らも合流して北海道の夕張市で走り込みキャンプを行った。
大橋会長は「熊が心配だった」と明かすが、熊は姿を現さなかった。
「井上家のオーラが近づけなかったんですよ」
真吾トレーナーがいつものジョークを交えていう。
その井上家の結束が自信の裏付けである。
視察した葛西トレーナーも「絶対に仕上げて来てくれますからね。井上さんところは」とリスペクトを口にした。
天心も判定で敗れた第1戦で「それ(井上家の結束)を感じた。僕は孤独だった」とも告白している。
真吾トレーナー、井上尚弥、今回のTシャツのデザインを担当し、天心の公開練習の視察にも動いた浩樹らが、拓真をサポート。全力を投球するとともに甘えも見逃さない。
井上尚弥は、拓真の「返り討ちにする」の記事を引用してXに「間違いない」と太鼓判を押した。
だが、一方で自信と自信過剰は紙一重である。
その懸念について筆者が質問すると、拓真は、こう答えた。
「堤戦に負けて全部思い知っている。そんな自信過剰とかでつまづいてる暇はない」
真吾トレーナーは「クールに冷静に、より濃くやってきた」とフォローした。
2025年11月に判定で敗れてWBA王座から転落した堤聖也戦は、準備段階から相手を舐めていた。引退さえ考えるほど、ドン底に叩き落とされ、そこから天心戦、井岡戦と這い上がってきた拓真は、同じ過ちを繰り返さない。
もう「井上尚弥の弟の井上拓真」は、卒業したとの自負がある。
「井上拓真のボクシングを見せたい」
次のフェーズに向かっている。
その井上拓真のボクシングとは何なのか。
「打たせないで打つ。その中でもしっかり攻撃的な部分でも見せる」
どこまで完成?
そう質問した。
「まだ完成ではない。まだ伸び代もあると思っている。まだ成長できる」
拓真の自信が本物であれば天心のリベンジは失敗に終わる。
拓真にとっても自信が本物かどうかを試される再戦である。

